翼が欲しかった少女の物語

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言ってることは正論に聞こえる。 (でも) 「だから貴女も協力してね」 「久我さんだって迷惑してるんだよ」 二人が言い効かせるように前へ出た。 「それは少し違うと思います」 声が出てしまった。 「は? 何あんた」 自分でも馬鹿だと思う。 「確かにその人のしていることは、お店からしたら迷惑だと思います」 「だったら」 「それを注意したり、意見を述べるのはお店の側の人がすることだと思います」 中学のとき、こんな子達がいた。 自分達の定規で計って、そこから逸脱する人がいると、我が正義とばかりに口論ふっかける子が。 私は外側から見る方だったから分かる。 人にはそれぞれ事情があるんだから、勝手に踏み込んではならない。 今回のことだって、そう。 もしかしたら、彼女はコーヒーが苦手なのかもしれない。 でも、あの喫茶店に行きたい理由があるのだろう。 だから、残してしまう。 勝手な憶測だけど、今目の前にいる彼女は、身勝手な理由で食べ物を粗末にするような人には見えなかった。 「何分かったような口効いてるのよ」 「そうよ。あんただってどうせ久我さん目当てなんでしょ?」
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