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帰ったら宿題片付けて母親の愚痴と妹の自慢話を聞き流して。
電車の音がまた言ってる。
今日も明日も同じだと。
学校で目立たない(問題を起こさないとも言う)ようにして、家でも気を遣って。
(何だか疲れたな)
ふっ、と足が伸びたのは気紛れで。
気が付くと私は知らない駅に降りていた。
(少しくらいなら、いいかな)
ちょっとだけでいい。
違う世界を覗いてみたくて。
改札を抜けると私と同じように下校途中の学生や、パート帰りの女性達の姿があった。
(何だ、やっぱり変わらないのか)
背景こそ違えど見慣れた景色にがっかりしたときだ。
すっきりとしたコロンのような香りがした。
(え?)
そう思ったときにはその人は私の前を歩いていた。
(わ、凄い綺麗な男性)
背の高さもそうだが、その歩く姿勢もまったく無駄がないように見えたのだ。
顔ははっきり見えなかったが、紙袋を片手に歩いているだけなのに何か違う雰囲気がしたから、絶対イケメンだ。
そう思ったら足が動いていた。
その男性は足早に駅前通りを過ぎ、路地に入って行く。
(待って)
慌てて路地に飛び込むと、男性がドアを開けるところだった。
(わわっ)
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