翼が欲しかった少女の物語

2/17
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
帰ったら宿題片付けて母親の愚痴と妹の自慢話を聞き流して。 電車の音がまた言ってる。 今日も明日も同じだと。 学校で目立たない(問題を起こさないとも言う)ようにして、家でも気を遣って。 (何だか疲れたな) ふっ、と足が伸びたのは気紛れで。 気が付くと私は知らない駅に降りていた。 (少しくらいなら、いいかな) ちょっとだけでいい。 違う世界を覗いてみたくて。 改札を抜けると私と同じように下校途中の学生や、パート帰りの女性達の姿があった。 (何だ、やっぱり変わらないのか) 背景こそ違えど見慣れた景色にがっかりしたときだ。 すっきりとしたコロンのような香りがした。 (え?) そう思ったときにはその人は私の前を歩いていた。 (わ、凄い綺麗な男性(ひと)) 背の高さもそうだが、その歩く姿勢もまったく無駄がないように見えたのだ。 顔ははっきり見えなかったが、紙袋を片手に歩いているだけなのに何か違う雰囲気がしたから、絶対イケメンだ。 そう思ったら足が動いていた。 その男性は足早に駅前通りを過ぎ、路地に入って行く。 (待って) 慌てて路地に飛び込むと、男性がドアを開けるところだった。 (わわっ)
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!