翼が欲しかった少女の物語

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だけど、中に人がいる気配はなくて。 (定休日だものね) それじゃあさっきの男性はここのオーナーか店員さんなのだろうな、と結論が出たところでその日は終わってしまった。 翌日。 昨日がお休みなら今日は大丈夫だろうと、私は再び例の喫茶店を目指していた。 もう少しあの男性のことを見ていたかった。 同じ地面の上にいるはずなのに違う世界の住人のような、それでいて何事にも動じない凜としたところがあるようで、もう一度それを確かめてみたくなったのだ。 (やだな、ストーカーみたい) 傍から見ればそのとおりかもしれない。 でも、その時の私にはそこで引き返す余裕なんてなかった。 (ひと目でいいから会ってみたい) 会話なんて交わさなくていい。 普通にお客さんとして接すればそれでいい。 そう思っていたのに。 (うわ、無理) 喫茶店『シャルール』は混雑していた。 もっと言えば満席で、皆きれいに着飾っていたのだ。 私より少し上の世代のお姉さん達が多いみたいで、友人達と来ているみたいにテーブル席は皆埋まっていて、奥のカウンターにも華やかな色が見えた。 (この中に入るとか何の罰ゲームなの)
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