翼が欲しかった少女の物語

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もともと私はおしゃれとかあまり興味のあるほうではない。 それに学校から直接来てしまったので制服だった。 これは目立つ。 出直そうと踵を返したとき、窓際のテーブル席に屈み込む男性が見えた。 (もしかして) 洗練された仕草でおしぼりを置いている男性は昨日見た人だった。 (やっぱりきれいだな) ちょっとした達成感を覚えながら駅へ引き返す。 スマートフォンで検索も忘れない。 (えっと、低予算でできるおしゃれとメイクは……) 百均に寄って小物とメイク道具を揃えて帰宅する。 (買いすぎちゃったかな) 学生のお小遣いで買えるものなんて限られている。 (あの動画、嘘じゃないといいな) 『百均のものだけで出来るナチュラルメイクッ!! え、これだけでいいの!?』という動画が上位の方にあったから、つい参考にしてしまった。 「おかえり。今日は遅かったのね」 「ただいま。ちょっと一本乗り遅れただけ」 母は早い時間に近くのスーパーでパートをしている以外は基本、家にいる。 それを言うと羨ましがられるけど、現実は違う。 「ねぇ、後でちょっといい?」 (またか) 母は職場や父に対する愚痴を話して、私で憂さ晴らしをしたいだけなのだ。 「分かった」 私は適当に返事をして二階にある自室へ向かった。
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