翼が欲しかった少女の物語

6/17
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
両親はどうやら恋愛結婚だったらしい。 『らしい』というのは今はそんな甘い雰囲気はかけらもないからだ。 「あ、この蕪の煮物美味しい。お父さんは?」 妹の問いに母は、 「今日は遅くなるって」 そっけなく言って、なめこのみそ汁に口をつけた。 ちなみになめこは父が苦手にしている。 私が小さい頃はここまであからさまではなかったと思う。 いつからか、母は自分の作りたいものを作るようになり、食べたい人が食べればいい、というスタンスに変わった。 とはいっても基本、母が作るのは和食が多く、特に食べ辛いと私や妹が感じるものは出ないのであまり影響はない。 「今日、漢字の小テストで満点だったよ」 (また、始まった) 得意気に小柄な胸を張る姿はどこか憐れみを誘うが口にはしないでおく。 「あら、また。よかったわね」 たんたんとしているようだが、これが母の最上級の褒め方だ。 なにせ、この三つ下の妹は、 『お姉ちゃんばっかりズルいっ!! あたしもスマホ欲しいっ!!』 私が高校の入学祝いでやっとゲットしたスマートフォンを『今度のテスト、学年で一位になったら、買ってっ!!』とごねにごねた挙げ句、本当に一位になってスマートフォンを買って貰ったのだ。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!