翼が欲しかった少女の物語

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何の冗談かと思ったけど、本当だった。 『やったー!! これで皆とラインできるっ!!』 妹の美彩(みどり)は私とは違って友達が多い。 部活だってバレー部で副部長を任されてるみたいだ。 『副部長、っていってもさ、いいように使われるんだよね。あー、連絡めんどっ!!』 ぐちってるのにどこか自慢気に聞こえる。 美術部で幽霊部員してる私とは大違いだ。 (何でこうなったのかな) 「ねぇ、聞いてる?」 母が手持ちぶさげに大分冷めた湯呑みを両手で包んでいた。 「聞いてるよ。勤務先の高橋さんがまた自慢したんでしょ」 母はその言葉に満足そうに頷く。 「そうなのよ。高橋さんの息子さん、模試で二位だったんですって。もういっつもその話ばかりで」 少しは考えてほしいわよね。 そう言って煎餅を割る(あなた)に言いたい。 (その言葉、そっくり返したい) この話も何度目ですか、と。 「だからね、つい言っちゃったのよね。うちの娘、テストで学年で一番になりましたよ、って。そしたらあの人、何て言ったと思う?」 この話も知ってる。 「なんて言ったの?」 「そりゃ確かに凄いけれど、まだ中学生でしょう、ですって!! 正直に悔しいなら悔しい、って言えば言いのにねぇ」 あなたもそれ位できたらいいのにねぇ。 大体がこの話はそこで終わる。 長い時はここから父の話になるのだが、今日は満足したようだ。 冷めたお茶を飲み干し、湯呑みを手に立ち上がる。 「じゃ、宿題あるから」
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