君と待ち合わせ

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 そこの広場は待ち合わせの名所だった。  多くの人々が集まり、まだかまだかと相手を待ち続ける。時間が止まったかのような穏やかな風景、暑くも寒くもない丁度いい気温。男が働く店の目の前は、そんな場所だった。  道にはたくさんの店が並んでいる。飲食店、雑貨屋、ゲームセンター。人々が飽きずに遊び回るには十分な並びだ。誰かを待つ時間潰しに歩く者、待ち合わせた相手と合流した後に歩く者。いつでもこの道は賑わっている。  男が働くのはレストランだった。子供向けのお子様ランチから、大人用のワインまで揃えてある種類豊富な店だ。彼がここに勤めるようになってどれくらい経っただろうか。  働きながら、ガラスの向こうの様子を見るのが好きだった。待ちくたびれた顔をした人が、相手を見つけた瞬間顔を綻ばせる瞬間はこちらも笑顔になる。そして並んで歩いていくその背中は幸福に満ちているのだ。男は料理を運びながら今日もそんな光景を眺めている。  だが、そんな彼には気になることがあった。待ち合わせ広場の隅っこに座り込んだ一人の少女だ。何やら絵を描きながらずっとそこにとどまっている。  周りが待っていた人と再会していなくなっていく姿をぼんやりと見つめては、手元のノートに視線を落とす。子供一人で、あまりに長い時間そこにいるため男はずっと気にかけていた。  彼女は一体何を待っているんだろうか。一人きりで、寂しくないんだろうか。 「おーい、そろそろ休憩いいぞ」 「あ、はい!」
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