モウスコシダケ

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「博士、それはなんというキノコなのですか」 「図鑑の444ページを見ろ」 「『モウスコシダケ』……聞いたことがないです」 「とても危険なキノコなんだ」 「何が危ないんですか」 「強力な毒がある」 「それは怖いですね」 「だが、その怖さを上回るほど異常に美味い。毒と分かっても、瀕死の状態でも、もっと食べたくなってしまう」 「それで『モウスコシダケ』という名前なんですね」 「ワシも種類を確かめるために少しだけかじったんだが……本当に美味い。腹いっぱい食べたい」 「駄目ですよ」 「しかし、今のところ身体に異常はないんだ。もう少しだけなら食べていいかもしれん」 「さっき自分で何を言ったかお忘れですか」 「ええい我慢ならん。食ってしまえ」 「あっ、博士、図鑑をよく見てください」 「『モウスコシダケ』という名前は聞き間違いで広まったと書いてありますが」 「本当は、食べたら確実に死だけが待っていることから『モウソコシダケ』という名前だそうですが」 「あ、もう遅かった」
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