あともう少しだけ。

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縁もゆかりもない駅前。 ぶらりと寄っては 壁にもたれて、待っている。 会えるはずがない いるはずがない 一度ここで会えたからといって それでも待ってしまう 名も知らない彼女のこと。 その出逢いは強烈で どうしても忘れられない。 行くあてのない僕を拾ってくれた人。 びしょ濡れの僕に タオルと着替えとぬくもりを 与えてくれた人。 翌朝、「頑張れ、男の子!」と 明るく僕を送り出し あなたはあっさり去っていった。 半袖から長袖になり 今はもう寒くて、襟を立て 口元までうずめた。 もう少し、あと少し……。 今となってはもう記憶はおぼろげで 彼女の顔がわかるかどうか自信はない。 そう思っていたのに── 「あれ? 君、前に会ったことある?」 一瞬でわかった。 世界に色が戻った。
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