24人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
縁もゆかりもない駅前。
ぶらりと寄っては
壁にもたれて、待っている。
会えるはずがない
いるはずがない
一度ここで会えたからといって
それでも待ってしまう
名も知らない彼女のこと。
その出逢いは強烈で
どうしても忘れられない。
行くあてのない僕を拾ってくれた人。
びしょ濡れの僕に
タオルと着替えとぬくもりを
与えてくれた人。
翌朝、「頑張れ、男の子!」と
明るく僕を送り出し
あなたはあっさり去っていった。
半袖から長袖になり
今はもう寒くて、襟を立て
口元までうずめた。
もう少し、あと少し……。
今となってはもう記憶はおぼろげで
彼女の顔がわかるかどうか自信はない。
そう思っていたのに──
「あれ? 君、前に会ったことある?」
一瞬でわかった。
世界に色が戻った。
最初のコメントを投稿しよう!