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 まだ生乾きの体操服を胸に抱え、あいつらに見つからないようにきょろきょろとあたりを見渡す。よかった、まだ来てないみたいだ。  誰よりも早く学校に来た私は、こそこそと体操服を持って女子トイレに入る。洋式の便器の蓋を閉めて通学鞄を置き、その上に制服を置いて素早く体操服に着替えた。  よし出よう、とドアノブに手をかけたところで、人が入ってくる気配がする。 「あいつ今日来んのかな?」 「体操服隠されて着るものないから来ないんじゃないの」 「やだー、かわいそーう」 「うわっ、隠せって言った本人がそんなこと言ってるの、こわすぎ!」  きゃあきゃあと楽しげに声を上げながら、女子数人が入ってきた。洗面台の前を陣取っているようだ。  あいつらだ。  一瞬にして、足元の地面がなくなったような感覚に陥る。こわい、見つかったらどうしよう。  足が震え、寒気がする。だんだんと気持ち悪くなってきたが、ここで吐いたら私だとバレてしまう。  落ち着け、まだ私がいるってバレてないんだから。  震える足を必死に踏ん張り、ドアに耳をつけて外の気配を窺った。幸いにも、彼女らは私に気づくことなく出ていった。  そっとドアを開けると、中学生がつけるにはまだ早過ぎる香水の臭いがした。いろんな臭いが混じって鼻がひん曲がりそうだ。  顔を顰めて鼻をつまみ、またこそこそとトイレを出る。着替えをどこに隠そうかと考えながら、教室へと重い足取りで向かった。
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