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「なーんてね。僕も相当なお祖母ちゃんっ子だよね」
花音はバツが悪そうに頭を掻いた。
「そんなこと……」
だって、だからこそ、その新婦さんの気持ちに共感できたのだろうから。
「まぁ、とにかくそんなことがあって、装花に対する考え方を変えたんだ。もっときちんと向き合おうって」
そう言った花音は晴れ晴れしい笑みを浮かべる。咲は思わず拍手をしてしまった。
「やめてよ、咲ちゃん。恥ずかしいよ」
「いえ、私、本当に感動しました。私も、花音さんみたいにもっと真摯に仕事に向き合わないといけないな、と思いました」
咲の言葉に、花音はフッと口元を緩める。
「咲ちゃんは本当に頑張り屋だね」と優しく頭を撫でた。
*
「このアレンジメントをゲストテーブルの中央に置いていってくれる?」
花音は台車に積んだフラワースタンドの一つから小さなバラの装飾が施されたシャーベットグラスのような花器を取り上げる。それには、少し燻んだホワイトカラーの紫陽花をベースに、色彩の抑えたピンクや紫、白のバラとトルコキキョウで丸い形を模ったアレンジメントが収まっていた。先ほど花音が教えてくれたラウンドブーケのような形だ。
ふんわりとした丸みと優しい色味が、文乃のイメージにピッタリだ。
咲は淡いベージュのテーブルクロスがかけられた円卓の中央へと慎重にそれを置いていく。そのあとを花音が花の状態を確かめながら、悪くなったものを取り除いたり、生け直したりする。
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