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「はぁ、間に合った」
花音と二人、開始時間ギリギリにチャペルへと滑り込む。思わず口をついて出た言葉が予想外にチャペル内に響いて、すでに着席していた参列者は一斉にこちらを振り返った。
咲は慌てて口を抑え、バツの悪さに花音を見上げた。花音はクスリと笑い、しーっと唇に指を当てる。それから、咲の手を取り、入り口から向かって左側へと歩き出した。
「おーい、武雄っ」
こちらを振り返った参列者の一人が親しげな声を上げ、手を振った。
「宮田さん……」
その声のほうを見、花音がつぶやく。
「お知り合いですか?」
咲は今度は声が響かないよう、声をひそめて尋ねた。
「うん。元同僚」
花音はそう言って宮田に軽く会釈を返した。そのまま咲の手を引き、宮田がいる側とは反対の一番後ろの席へと着席した。
チラリとバージンロードを挟んだ向かいの宮田を見れば、彼は周りの人たちと何事かを話をしている。きっと宮田の周りにいる人たちも花音の元同僚なのだろう。チラチラと興味深げに向けられる視線が痛かった。
それにしても、先ほど声をかけてきた宮田も、その周囲の人々も一様に体格が良い。しかもみんな凛太郎を凌ぐ強面ばかりだ。
──お花屋さんって、体格が良くないとできないのかな? しかも強面って。
咲の思い描いていた花屋のイメージとはだいぶ開きがあった。
「どうかした?」
咲の疑問が顔に出ていたらしく、花音が小声で尋ねる。
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