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やがて聖壇の横に立つ司会者が開式の宣言と今回の式についての説明を始めた。
それによると、今回の挙式は『人前式』というスタイルで行われるらしい。『教会式』や『神前式』とは違い、神様ではなく参列者に結婚を認めてもらう方式なのだそうだ。
司会者の話に代わり、オルガンの生演奏が聴こえてきた。同時にゆっくりと美しい彫刻の施された白い扉が開く。
その向こう側に亮介と彼の腕に手を添えた文乃が佇んでいた。
参列者は一斉立ち上がり、歓声と拍手で二人を迎える。咲も文乃の美しさに、思わず声を上げ、拍手をしていた。
亮介のエスコートでバージンロードを歩く文乃は本当に幸せそうで、咲は嬉しくなる。
──だけど……。
反面、花音のことが気になった。
咲はチラリと背後の花音を窺った。花音は穏やかな笑みと拍手で二人を祝福している。
そんな花音が切なく思えた。
だって、花音さんはまだ文乃さんのことが好きなのだ。幸せそうな文乃さんと亮介さんを見るのはきっと辛いはずだ。
本当は結婚式にだって出席したくなかっただろう。
けれど、花音さんの立場や性格上、凛太郎さんのように無下に断ることもできなくて。──だから、せめてもの緩衝材として自分に同伴を依頼したのだ。
花音の心情を思うと、咲の胸はキュウっと締めつけられた。
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