本当に後悔した話

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*** 俺は知香のカバンにマスコットが付いているのを知っていた。 どこでも買えるくまのキーホルダーだ。 俺は教室移動の時を狙って、彼女のキーホルダーを取った。めちゃくちゃドキドキする。ただ外すだけなのにめちゃくちゃ手が震えて、時間がかかる。 そして外したあとは。俺が買ってきた同じキーホルダーをつけておいた。 家に帰ってもドキドキしていた。 知香のキーホルダーが今、手の中にある。 そしてこのクマは頭と胴体がはずれる仕組みになっている。キュキュと引っ張ると簡単に取れた。 俺は抜いた髪の毛I本と、爪を入れた。 爪は爪切りで伸びた爪ををちょっと切ったやつだ。 さすがに生爪を剥がすとかムリだし。 そこで、たまたまその時に思い出したけど、俺は親知らずを最近抜いた。 その歯を小さなケースに入れて、歯医者がくれたんだけど、正直言って痛い思いをした歯なんかいらねーのに!と思っていたが、なんとなく机の引き出しに、そのケースをいれていた。 そうだ、この歯を入れたら効き目が強力になるかも!と思い、その歯もくまの胴体に、押し込んだ。 そして、この際だ。血だっていれてやれ! 俺は安全ピンの針を左手の人差し指にちょこっと刺した。 「いっ……た!」 指先から小さく血が滲む。 指でギュッと押すと血がプクッと盛り上がった。 ティッシュでその血を拭き取る。そして、クマの中で親知らずが、カラカラと音が鳴らないように、その血のついたティッシュを詰める。 そして、クマの首と胴体をぎゅっとくっつけた。 そして、また次の日。同じように移動教室の時間を見計らい、知香のカバンに近づき、俺が買った方のクマを取り外し、元のクマを付け直した。 ホント。人が来ないかビクビクしたわ。 あとは、3日後。 その日、公園で告白して、上手くいけば彼女を家に送っていきたい。 *** 意外と3日は長い。 やっと今日がその日だ。 でも、おまじないの効果なのか、それとも偶然なのか、この3日間、知香と話す機会が多かったり、目が合うことが多かったりしたような気がする。 あとは、放課後、"今どこにいますか?" と連絡するだけだ。 そして、放課後。 俺はクラブを終えて、着替えて時計を見ると6:30。 知香もバドミントン部に入っていて、同じような時間に終わるのを知っていた。 が、まだバドミントン部の方は練習が続いている。 俺は制服に着替えてから、こっそり体育館を覗いたら、バドミントン部は丁度終わりの挨拶をしているところだった。 うまくいけば、多分2本くらいあとの電車で知香は帰ってくるだろう。 俺は知香の家の最寄駅近くにある公園で待機した。 公園、と言っても一面芝生で.その周りはジョギングコース、と言ったような造りで、子供達が遊ぶような遊具もない場所だ。ベンチならある。 もう寒い季節なので周りは暗く、その場所も人がもう誰もいない。 そして、俺の2本あとの電車に乗っているであろうと想定して、LINEを送った。 "知香?" "今、どこにいますか?" このおまじないの事を、知香も知らないハズないだろう。 名前を付け足したのは、それをなんとなく普段の喋り方に近付ける為だった。 しかし、どっちにしろ告るのはバレバレな気もしたが、知香はそれを笑うような子でもない。……と思いたい。 早速、知香から連絡が来た。 "あともう少しで家の最寄駅につくとこ!" "あ、克己はどこにいるの?良かったら会いたいんだけど" 俺に会いたい!? もしかして、おまじないが効いてる!? 俺は急いで文字を打つ。 "たまたま知香の最寄駅の近くに来たからLINEしたんだけど、もしかしてタイミング良かった?駅から1番近い公園にいるんだ。遊具はないけど、芝生の広場みたいな" "たまたま"なんてウソだけど。 "分かった!そこ体操広場の事だ。そこに寄るね。あ、今、駅に着いたよ。じゃ、あとで" クッソ!めちゃくちゃ緊張する。 でも、彼女を待たないと。 広場の入り口付近にいる事にする。 多分、ここに10分以内に着くだろう。 俺は緊張しすぎて、何度もため息を吐いた。 足元を見たり、そろそろ来るかと周りを見渡してみたり…と、言っても駅から来るなら、多分真正面に見える踏切を超えて来るだろう。 踏切は今居るここから30mほど先にある。
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