酒場の旅人(始)

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酒場の旅人(始)

 大陸の北東部にある酒場にルドルフと言う商人が、疲れ切った顔で酒を飲んでいた。大陸最大級の霊峰アジャル=ビヤンスの峠越えをする前の景気づけ、と言いつつ丸一日酒を飲み続けていた。彼がそこまでして飲むのは単に疲れを癒す為ではなく、切り立つ霊峰の岩肌に怖気付いただけである。  周りの商人は峠越えに当たってスパイクの付いたブーツや防寒具などを一式取り揃え、朝日が昇ると同時に旅立つらしい。さらに彼らは遭難等に備えて冒険者を雇ったり、他の商人と共に峠越えをしようとしている。しかしルドルフには冒険者を雇ったり、峠越え装備を一式揃えるほどの金がないのだ。こうして無駄に時間を過ごすだけである。  周りの商人は峠越えに当たってスパイクの付いたブーツや防寒具などを一式取り揃え、朝日が昇ると同時に旅立つらしい。さらに彼らは遭難等に備えて冒険者を雇ったり、他の商人と共に峠越えをしようとしている。しかしルドルフには冒険者を雇ったり、峠越え装備を一式揃えるほどの金がないのだ。こうして無駄に時間を過ごすだけである。 「おや、砂流民(さりゅうのたみ)は金持ちだと信じているのかな。それはとんだ誤解だ。ドゥルドのオアシスが富を授けるのはほんの一部の人間だけさ。私はこうして旅をする羽目になったのもそれが理由さ」  男は彼の心情を読み取ったのかそのような言葉を口走り始めた。砂流民(さりゅうのたみ)とはドゥルドの民を指しているのだろう。彼らはオアシスの地下に眠る莫大な黄金を手にし、永遠の富を我が物にしている、と言う噂は何処でも聞く。男は噂を単なる噂に過ぎず、事実と乖離しているのだと語る。終いには、自分が旅をしている理由はオアシスのせいだと語っているのだ。  その言葉に彼は興味が惹かれた。何故、旅に出ることになったのか。旅で何を得ようとしているのか。訊ねてみると意外な返答が帰って来たのだ。
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