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時を戻す少年 1
『やり直したい?』
俺は驚いて勢いよく振り向く。子供のような声がしたが後ろには誰もいなかった。家の中なので知らない子供がいる訳がない。
どうして俺がやり直したいと分かったんだろうか? もしかすると、一部始終を見られていた?
『だって、4回目だもん』
また子供の声が聞こえたので周りを見渡すが、もちろん誰もいない。そもそも、4回目の意味もよく分からなかったが、子供に質問しても的確な答えが返ってこない感じがしたので、そこはスルーした。この時点で訳の分からない現象が起こっているので、藁にもすがる気持ちで聞いてみる。
「僕、時間を戻せるの?」
取り敢えず彼の話に乗っかり、見えない彼に話し掛けた。
『もちろん! その為に来たんだよ』
「妻を殺してしまったんだ……」
『もちろん知ってるよ』
「ついカッとなって……」
『うん、じゃあ時間を30分戻すね』
本当なら凄い事だ。時間を戻すなんて事が出来る筈も無いのに、俺は何故か、この見えない少年が時間を戻せるような気がしている。
良かった……のか?
もちろん、犯罪者にならなくて済むという思いもあるが、妻に生き返って欲しいというのが本音だ。付き合い初めの恋愛感情など、とうの昔に無くなってはいるが別に嫌いになった訳では無い。ちょっとイラッとして殴ったら死んでしまっただけなんだ。何も死ぬ事は無い。一緒に住むのが嫌なら離婚して別々の道を歩めば良いだけなのだから。
『この30分間の記憶は、ほぼ無くなるからね。じゃあ……』
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