変身

神様の諸事情 1

あ～あ、美人に生まれたかったなぁ……。

私の名前は上野綾子(うえのあやこ)、高校3年生の17歳。中学卒業までは、見た目がキモいからと男子にイジメられてきた。美人と言わないまでも、せめて普通の顔に生まれたかったなあと日々思っていた。
だけど、両親を恨んだりは、していない。性格までブスには、なりたくないからね。神様が私を作る時、相当忙しかったんだろうと言い聞かせた。

高校からは女子校に通い、一変して幸せな高校生活を送っている。中学時代はキモいキモいと言われ続けてきた私だけど、高校では、皆が可愛い可愛いと言ってくれる。もちろん、お世辞だという事は分かっている。中学時代にも可愛いと言われた事があるけど、それは嫌がらせとしか感じられなかったから不愉快だったけど今は違う。高校の友達は皆優しいから嘘でも嬉しい。

「上野綾子さん！」
「はっ、はい！」
私はADの女性に声を掛けられ、彼女の後についていく。
何と私、コンテストの2次審査を通って、今から最終選考が行われるの。いやいや、不細工コンテストじゃないよ。『国宝級美少女コンテスト』なの！ 何であんたみたいなブスがって思われちゃうかも知れないけど、それは私も同感。

先月、友達が勝手に私の写真を送って応募したら1次審査を通ったんだって。まあ、写真なんて今の時代、色々と盛れるからね。で、2次審査なんて行ったところで時間の無駄だから止めようと思ったんだけど、記念に行っておいでって皆が言うもんだから、私もノリノリで面接と水着審査を受けたの。こんな経験、2度とある訳ないからね。じゃあ、何の手違いか分からないけど、2次審査を通過したのよ。いや、本当意味が分からない。ドッキリなの？ って思ったけど、私みたいなド素人に長々とドッキリを掛けないだろうし、審査員に変わった人がいたのかな？ 『国宝級美少女コンテスト』の審査員が変わった人じゃダメだと思うけど……。

私は最終選考を受けて控え室に戻ってきた。でも、多分ダメだと思う。いや、最初からダメに決まっているんだけど、今日の面接で、審査員へ上手くアピールが出来なかった。

「それでは合格者を発表します！」

遂に来た……。選ばれる訳が無いと思いながらもドキドキする。皆は選ばれたいと思ってドキドキしているんだろうけど、私は、私みたいなブスが選ばれたらどうしようと緊張してきた。噛ませ犬的な役割で選ばれる事とかあるんだろうか？ そもそも、どうして私はこの場所にいるんだろう？

「……22番！ 29番！ 以上です！」

歓喜の声をあげて泣く人、落胆して崩れ落ちる人、皆のリアクションは様々だ。私の結果は、と言うと、もちろん落選。ちょっと期待していた自分が恥ずかしい。その為、全くガッカリしていない。むしろホッとしている。全国ネットで恥を晒(さら)さなくて良かったぐらいの感情だ。