神様の諸事情 2

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神様の諸事情 2

ファイナリストに選ばれた人達は別室に呼ばれ、落選した人達は気持ちの整理がつかないのか、なかなか部屋を出ていけないみたい。私は彼女達を尻目にドアを開け、帰ろうと廊下を歩いていた時、不意に声を掛けられる。 「上野綾子さんですよね?」 振り向くと先程の女性ADさんだった。 「はい。そうですけど……」 「瓜生(うりゅう)先生が呼ばれています」 「はい?」 誰だよ! 私が不思議そうな顔をしているのを見て、女性ADは続ける。 「瓜生厳冬(うりゅうげんとう)先生ですよ。カリスマプロデューサーの」 だから誰だよ!! 「瓜生先生から声を掛けられるって凄い事ですよ。頑張ってね」 「は、はい……」 よく分からない……。ウリュウゲントウ? 有名人なのかな? 何か騙されてる感が半端じゃないんだけど……。女優になる為に、お金を払って何かのスクールへ勧誘してきたらどうしよう……。 私はAD女性について行く。ある部屋で立ち止まると、彼女はドアをノックした。 コンコンコン 「はい」 部屋の中から男性の声が聞こえた。 ガチャ 「失礼します。上野綾子さんをお連れしました」 女性ADが入ってくださいという感じで私を誘導した。 「失礼します」 私は控え目の声で挨拶をし、一礼をして部屋に入ると、正面には1人の男性が足を組んで椅子に座っていた。30代ぐらいに見える。また面接をするような雰囲気だ。彼は私を舐めるように見た後、話し出す。 「……なるほど……。こんにちは。瓜生です」 男性は姿勢を正し、座ったまま軽く頭を下げて挨拶をした。 「上野です。宜しくお願いします」 ゲントウなんて名前だから、白髪の頑固なお爺さんを想像していたのに、イケメン風の茶髪男性だった事に驚いた。お洒落っぽい雰囲気が凄く出ている。良く分からないけど……。 「上野さん、合格にしておいたから」 「はい?」 「さっきのコンテストの最終選考ね。僕の権限でねじ込んでおいたから」 「え? ……ありがとうございます……」 「僕がプロデュースするからには絶対優勝させるから、そのつもりで」 この人は何を言っているんだろう? どこまで信用して良いの? 「えっと……私、何をすれば良いんでしょうか?」 「ピアノが()けるんだってね。決勝のアピール時間の為に練習しといてよ。後の事は全て僕がプロデュースするから」 その日は、瓜生さんと軽い雑談をして帰路についた。何か騙されているんだろうか? でも、別にお金を払った訳でもないし……。
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