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「ふふふん、ふふふん、ふふふんふん」
鼻歌を口ずさみながら、クローゼットの扉を開け、独身時代に買ってから一度も袖を通してない真っ赤なワンピースを取り出す。
それをソファーに無造作に置き、今度は押し入れの引き出しを引っ張り出して、買ってから一度も着けてない茶髪のウィッグを手にした。
茶髪セミロングのストレートボブのウィッグ、随分前に誰にも内緒で買ったやつ。
本当は結婚式の時のお色直しで着けて、色っぽい自分を演出するつもりだったけど、バタバタし過ぎて使うのを忘れていたやつ。
そのウィッグを着け、ソファーに置いてた真っ赤なワンピースを着て、そのままドレッサーの前に。
3年間もの長い時間化粧すらした事がなかった私。その長い時間を払拭するべく、パタパタパタパタと化粧をする私。
パールのネックレスを首にかける。
《もしもの時》の為に購入していたカラコンを入れて、全て完了!
「わたしぃ~、へんしんっ!」
玄関横にある姿見に映る自分を見つめて、大きな声でそう言うと、大好きなピンクのパンプスを履いて、そのまま麗子との約束のあの居酒屋へと出掛けた。
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