おじいちゃんが死んだ

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「では、代表して喪主の方にこちらのスイッチを押していただきます。そのスイッチを押すと」  火葬場の方が説明して、叔父さんがスイッチを押しても実感はわかない。  骨になったおじいちゃんを見たって、本当に? おじいちゃんは死んだの? 実感どころかそんな疑問が膨れ上がるだけ。  私が遺骨を持って車に乗り込んで、おじいちゃんの入るお墓に向かったって同じこと。  遺骨をお墓に入れ、お供え物をしてお坊さんにお経を読んでもらって、線香をあげて。全ての儀式が終わった。それなのに私は全然泣けなくて。 「あーあの人ならしそう」 「何度ぶん殴られたか」 「私は隣の部屋までぶっ飛ばされたよ」  お母さんと叔父さんはおじいちゃんにいかに酷いことをされたかという自慢話で盛り上がってる。 「こら! でんぐり返ししない。誰がその服洗うと思ってるの!?」 「「さぁ?」」 「さぁじゃないでしょ!」  お墓の前の芝生で転げ回る小さい従兄弟たちを怒鳴る叔母さん。 「私たちもそのうちそっちにに行くからねぇ」 「俺たちのこと見守っててよ」  お墓の中のおじいちゃんに話しかける弟夫婦。  私はすることもなく、お父さんと一緒にお供え物の大福をもぐもぐと食べるだけ。  最後まで薄情な孫でごめんね。私はまだおじいちゃんが死んだって思えないんだ。ごめん、ごめんね。  そんな風に思いながらお墓見て大福を食べる。  多分、次帰る時じゃないと実感できないと思うんだ。  親戚みんなで集まって、そこでおじいちゃんの話をして。  その時に初めて、いつも上座でふんぞり返って酒飲んでたおじいちゃんがいないって思う。  あぁ、おじいちゃんは死んじゃったんだね。  初めてそう思える。そんな予感がしてる。  今これを書いてるのは帰りの飛行機。これから私は二時間運転をすることになってる。事故起こさないように見ててね。そう思ってるのに実感がないんだから、私って都合いいねって思ってる。  次お墓参り行く時にはちゃんと心の底からありがとうって言えるようにしておくね。  可愛がってくれてありがとう。言ったことなかったけど、私おじいちゃんのこと好きだったんだよ。これからも好きです。  今度帰ったら仏壇に手を合わせてして、お墓参りにも行くね。  長い間お疲れ様でした。またね、おじいちゃん。
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