経緯。

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「あ! お父ん手作りのステガーマリーの絵本まで! 確か主人公の名前は… トヨトミやったかな? 其ともトヨハシ… 思い出した! トヨヒサやトヨヒサ!」 嬉しそうにイラブー。 自分が今いる部屋こそがかつて幼少期から少女期にかけて暮らしていた場所だと、更に強く認識しつつある。 しかし、その笑顔はやがて消えてしまう。 その原因は、彼女の部屋に運び込まれたベッドで、もう丸三日以上気を失ったままの人族男性に有った。 その人族男性こそ他ならぬ一式陸攻本人。 この事から分かるように、陸攻は3日前に領主邸前の広場で行われたテ領主シゲヒサとの決闘に敗れてしまったのだ。 時刻は既に零時近く。 イラブーの心配をよそに、陸攻はすやすやと寝息を立てている。 「…陸のどあほ。 お父(と)んはね陸。 セキガーラの戦いでステガーマリーの術つこて、トクガーの犬どもを片っ端から返り討ちにした猛者なんやよ? 其に、トヨアニョ… 多分トヨヒサのモデルになったお人やね。 トヨアニョから武術も教わっとう。 新陸でも使わな敵う相手とちゃうんに… …ほんまにあほやね陸は」 苦笑しながらイラブー。 尤も、陸攻の容態が既に峠を越え安定しているからこその言葉なのだが。
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