波及。

3/50
前へ
/299ページ
次へ
やがてムジーフは、アインの仕事に差し障りがない範囲での雑談兼情報交換を一段落させ、イアンヴェ支店での用件に取り掛かる。 「!!! し、支店長!? …あっしがですかい?」 「はい。 若旦那様直々の業務命令です」 アインの言葉にそう応え、羊皮紙製の辞令を取り出しアインに手渡すムジーフ。 敢えて若旦那様の御言葉ではなく業務命令と述べたのは、テ領民の大半の中に未だ居座る過ぎた謙遜、否、卑下を考えての事であった。 ○○だから云々、×××の分際で何々、△△の癖に、◇◇が役職に就くなど身の程知らず… 旧支配階級に拠り念入りに念入りに植え付けられたこれ等の考え方或は行動原理は、アリームとムジーフにとってとんだ厄介物尚且邪魔物に他ならないのだ。 この考え方は、アリームとムジーフ一式ペアそしてアハトアハトの三者間でピタリと重なっているのは言うまでもない。 そして、アインの性格上、業務命令と言われた以上その答えは1つであった。 「へい。 慎んでお受け致しやす。 しかし番頭さん。 アリームの大将は、なんであっしなんぞを支店長なんて要職に?」 「信頼に足るお人柄だからだそうですよ。 勿論私も若旦那様と同じ考えです」 穏やかながらもキッパリとムジーフ。 そして言葉を続ける。 「私からは以上です。 処でアインさん。 悩み事や困っている事はありますか?」
/299ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加