波及。

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 此方の世界に運送処羽黒屋が誕生してから既に数ヶ月。 満場一致にて金喰い蟲分隊士に推された寅田鳥松の目から見ても、摩耶と足柄はこの二週間というもの何処か元気がない。 「無理もないんだな。 まさかクマさんが記憶を失っているなんて…」 鳥松はそう呟きつつ、今や羽黒屋の稼ぎ頭の一角を成す摩耶の世話に余念がない。 あれから砂漠急行ハツール号は人々の支持を得て、3両編成から7両編成に増強されているのだ。 主牽引車ならぬ牽引者である摩耶と足柄が牽引する列車(正確には列者)を、補機として球磨と北上が後押ししている。 金喰い蟲4頭が常に護衛している砂漠急行を襲うような危険生物や盗賊は、今のところとは言え皆無と言えた。 何故なら摩耶・足柄・球磨・北上は、砂漠の絶対者と恐れられる皇帝級スチールスコーピオンすら迂闊には絡めない程に強いのだから。 そして、砂漠船団と羽黒屋(一式ペア)との間に正式な同盟が締結された事により、砂漠航行中の列車に不測の事態が発生しても、砂漠船団の支援・救援が受けられる事になったのだ。 当然乗客用のスペースは見違えるように広くなり、運賃収入は今や当初の十倍強を越える勢いで増え続けている。
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