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とトシさんが私の真似をして笑って、芙美さん、お母さん、伯父さんも「めっちゃ美味しい」とちょっとふざけたみたいに笑った。
私はその時、温かい気持ちに包まれて、なんか幸せだなって思えた。
その日の夜、隣でお母さんはぐっすり眠っていたけど、私はなぜか眠れなかった。
明日、家に戻る前に、今日買って来たちょっと早めの誕生日プレゼントを、伯父さんに渡そうと思っていた。
私はそっと静かに階段を下りて、厨房に入った。
そして、伯父さんがいつも仕込みをしている調理台にプレゼントを置いた。一応、サプライズってやつだよ。直接渡すのちょっと照れるし。
このまま眠くなるまでここにいようかな。そう思いながら、お店の窓際の席に座った。
夜中の店内は暗いけど、この席は月明りでほんのちょっと明るい。
誰も歩いていない歩道を眺めていると、店の前の大きな桜の木が気になった。春になると店の窓からこの桜が見えるから、その頃お店がちょっと流行るって伯父さんが言ってたっけ。
春か……。
桜とか気にした事ないけど、私はちょっとだけ想像した。
例えば、お店を貸し切りにして、トシさん、芙美さん、トシさんの旦那さん、樹利亜さん、真田さん、西尾さん、修くんを招待してお花見をやる。
その時、私が全てお料理を作る。
ミルクキャラメルを舐めながら……。
まず、伯父さんが作ってくれたふんわりとした卵サンド。
トシさんが作ってくれたツナと紫蘇とわけぎのそーめんチャンプル。
お母さんが作ってくれた牛小間の肉じゃが。
スイーツは真田さんと西尾さんと一緒に食べたコンビニのケーキを並べて。
あっ、今日食べたカレーもいいけど、作るのは無理かな。
でも、お花見にしては地味なメニューだから、やっぱり伯父さんに何か作ってもらった方がいいかも。
「ふあぁ……」
欠伸が出たからそろそろ寝よう……明日の為に。
終
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