恋愛小説家・月丘雨音

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「どんな?」 「幸運のパワーブレスとか……」 「えっ?」 「それと、ホームページに来客者のコメントを載せるとか……私、こんなに仕事がうまくいきましたとか、結婚できましたとか……宝くじが当たりましたとか……」 「何か怪しい方向に行ってないか?」 「あっ、3回鑑定に来てくれたら、4回目は無料! とか?」 「ちょっとちょっと晴美さん!」  呆れる明生をよそに、晴美は部屋の隅にあるパソコンの前に座り『占瞳館』のホームページを開いた。 「晴美さん、そのうち忙しくなるって……」  その時、電話が鳴った。早速予約の電話かと、晴美は素早く電話に出た。 「はい、占瞳館です……あっ……」  電話はエリからだった。相談があるので明日にでもこちらに来たいとの事だった。確認するまでもないが……明生の方を見ると、「OK」サインをしていたので「お待ちしています」と電話を切った。  前にショッピングモールの『占いの館』に来た時の鑑定では、まだ悩みが解決しなかったのだろうか。晴美は何気なく明生に尋ねた。 「ねぇ、エリちゃんは前、何の相談に来たの?」 「答えると思う? お客様の相談は例え親でも妻でも子供でも愛犬でも愛猫でも、誰にも絶対口外いたしません!」 「はいはい、そうでしたねぇ。でもね、たとえ明生さんが私に話したとしても、大して人の悩みには興味がないから安心して」 「じゃあ、どうして訊いたの?」 「別に……何となく」 「晴美さんは、今あのエリさんがちょっと苦手なんだね。でも嫌いではない。ただ会って話すのが辛い……そう、思い出したくない事があるから」  いきなり明生に指摘された晴美は大きくため息を()いた。 「明生さんには何でも気付かれちゃうか……」 「そう、前に会った時もかなり無理してた様に感じられたけど。多分、詩織もそう思ってたと思う」 「えっ! そうなの?」
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