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そして、客にリラックスして貰おうと奮発して購入した、座り心地の良いタータンチェック柄のソファーがある。そのソファーに座り、晴美は小さくため息を付いていた。
「明生さん、今日ってお客さん二人だけしか来なかったわよね……」
自宅で仕事を始めて、もうすぐ二カ月。『占瞳館』の客足はイマイチだった。
ショッピングモールでは買い物の合間などに気楽に占って貰おうという客が多かった。それにズバリ的中した時などは、その後も定期的に相談に来る客がいた。でも今は、気楽に寄れる場所ではなくなったからなのか、客は減った。
『占瞳館』は晴美と明生の人生設計の中では詩織が中学に上がる頃、晴美と明生が四十歳を過ぎてから始める予定だった。でも、明生の持病である腰痛が悪化し、一年程前には救急車で搬送された事があった。
それから心配症の晴美は、少し早いが予定を早めようと明生に提案した。その時、明生は自分だけではなく晴美や詩織の運気も占って、いい時期にこの『占瞳館』を始める事を決めた。僕たち三人にとって、それぞれ何らかの「変化」が起きる筈。それを吉にするのか凶にするのかは自分次第。そう言っていたが、『占瞳館』の出だしは吉とはいかなかった。
明生は晴美の向かいの、一人掛けの年期の入った椅子に座り、紅茶を飲んでいた。
「まぁ、始めたばかりだからね。でも、当たるって評判が流れたら自然にお客さんは増えるよ。ショッピングモールのお客さんも来てくれるって言ってたし」
明生は自分の鑑定に自信があるのか、晴美を心配させたくないのか、客が少ない事に関して何も気にしていなかった。
「駅から徒歩10分っていうと遠く感じるのかな? ホームページのアクセス欄、駅から徒歩5分って書き変えようかな。早歩きだったら5分で来れるよね?」
「うーん……かなり早歩きになるかもな」
「そうだ! オープン記念に何かプレゼントを付けようかな」
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