腕時計の誓い

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オレが出会った頃は准教授だった彼はいま、教授になっていた。異例の大出世だ。 くちゅくちゅと唇を合わせながら、オレたちはそのまま寝室へと向かう。 予定では一時間後に帰ってきた彼と乾杯をしてお祝いをし、それからベッドインのはずだったけど、今はまだ乾杯するには早すぎる。 ベッドに入るのも早いけどね。 記念日というのに加え、まだ明るい時間からの淫靡な行為がオレたちの気持ちをさらに盛り上げる。 いつもは優しいキスと愛撫から始まる行為も、今日は初めから激しく口内を貪られ、性急な手によって後ろを解される。そしてオレはそんな彼のベルトを外し、激しく唇を合わせながら彼のものを握り、扱いていく。 付き合いたてでも、うぶな子供でもない。 オレたちはただ本能のまま相手を求め、高め合い、そして繋がった。 激しく中を突かれ、締め付ける。何度も受け入れたオレの中は彼の形になり、挿れるだけでもいい所にあたる。それをさらに締め付け、擦られ、オレは決まって彼よりも先にイってしまう。 「いいよ。何度でもイって」 快感が身体から抜けるまで動きを止めてくれた彼は自身を埋めたままオレの耳を舐め、舌を入れる。そのぞくぞくとした感覚に再び身体が反応し始めると、彼はまた腰を動かし始めた。 オレのいいところを全て知る彼は激しく腰を動かしながらも、ちゃんと胸を弄ることを忘れない。 中を擦られながら胸を強く抓られるとオレの身体はその快感に仰け反り、また達してしまう。そしてさらに締め付けたまま彼が腰を引くと、後孔がめくれるのが分かった。 「いやらしい身体だね」 キスで濡れた唇と潤んだ目。そんなオレを身を引いたまま上から見下ろす彼もまた、欲情で目元を赤く染めている。 「早く・・・来て・・・」 一番太い部分を入口に引っ掛けた状態の彼にオレは腕を伸ばして誘う。 早く奥まで突いて欲しい。 そのオレの願い通り再び勢いよく腰を進めた彼はその勢いのままオレを起こし、座位の体位にした。 「あ、深・・・い・・・っ」 起こされた勢いと、自分の重みで彼のものが深く刺さる。それをさらに下から突かれ、オレの口はもはや喘ぎしか出てこない。 後ろは奥深くまで突かれ、前は密着した腹の間で擦られる。そして唇まで貪られてはもう、オレの頭はぐちゃぐちゃだ。何も考えられないまま何度も追い上げられ、イカされ、そしてやっと彼がオレの中に欲望を吐き出す頃には、オレの意識は半分飛び、身体はイキっぱなしになっていた。そしておそらく気を失っていたんだろう。気がつくと外は真っ暗だった。 久しぶりの激しい交わり。最近はずっと優しい行為だったから、身体がついて行かない。 明日、会社行けるかな・・・? そう思っていると、後ろから抱き抱えように身体をくっ付けていた彼が頭にキスをした。 「久しぶりに失神したね」 その言葉が嬉しそう。させる方はいいけど、する方は大変なんだぞ、と抗議したいけど、叫びすぎたのか喉が痛い。だからオレは身体の向き変えて彼に向き合うと、顔をムッとさせた。 「怒った顔もかわいいな」 25の男の顔はもう可愛くないと思うぞ。と、思いながらそれでもオレは彼に抱きついた。そんな言葉を平気で吐く彼は本当にそう思っているのだ。かわいいかどうかは別にして、その言葉にこもるオレへの愛情に応えたのだ。 「本当にかわいいな」 抱きつくオレを、さらに彼はむぎゅっと抱き返してくる。 彼の腕の中は心地いい。彼の匂いも彼の体温も、すっかり馴染んで安心する。 6年前の今日、オレは初めて彼の腕に抱かれて結ばれたんだ。 「7年目もよろしく」 掠れた声でそう言うと、彼は優しく微笑んだ。 「こちらこそ、よろしく」 そう言って彼がベッドの下から小ぶりの紙袋を取ると、オレに渡した。 「何?オレなんにも用意してないよ?」 いつも記念日はお祝いするけど、プレゼントなんて贈りあったりしていない。 「いいから開けてみて」 慌てるオレに、早く開けるように促す彼。 言われるままに中を見ると箱が入っている。それを手に取り開けてみると、そこにはペアの腕時計が入っていた。 「そろそろけじめをつけてもいいと思ってね」 けじめ・・・ペアの腕時計・・・。 オレはハッとなって彼を見上げる。 「これからもずっと・・・一生私のそばにいて欲しい」 真剣な目で見つめながらのその言葉はプロポーズ。 オレはびっくりして彼を見つめる。
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