「今、どこに住んでいらっしゃいますか?」

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 トイレへ向かう途中に喫煙室がある。  その廊下に愛さんともう一人、細身で背の高い、若い男性の姿があった。 ーー斉木さんだ。 「おめでとうございます!」  盗み聞きをするつもりはなかったが、傍を通った時、愛さんの少し高めの声が耳に入った。  思わず、そちらに顔を向けると愛さんと目が合った。 「みのりさん! 斉木さん、結婚することになったそうですよ」 「えっ……!?」  突然の展開に頭がついていかず、足を止める。  しーっ、と口元に指を当てて、斉木さんが手招きした。  二人の元へと足を運ぶと、斉木さんは少し照れた様子で言葉を紡いだ。 「いや、あの……実は昨日、彼女と仲直りしまして。プロポーズはまだこれから、クリスマスに、って考えているんですけど……」 「……ああ、なるほど、それで『おめでとうございます!』だったんですね」  斉木とさんと愛さんを交互に見る。おめでたいお話は良いことだと、愛さんが一足先にお祝いの言葉を口にしたのだろう。容易に想像がついた。 「……ということは引っ越しは……」 「あ、ハイ。このまま今のところに住むつもりです……返事が『OK』だったら、ですけど……」 「大丈夫ですよ。だってケンカの原因は『結婚』だったんでしょ? いつまでもプロポーズしてくれないなら、って。だったらOKに決まってますよ」  斉木さんは自信がなさそうだったが、愛さんのその言葉に背中を押されたようだ。 「だといいんですけど……そのあたりの変更があったら、またご報告しますので」  私と愛さんは互いに見合わせた。 「「お待ちしてます!」」  きっと二人とも満面の笑顔を浮かべていたに違いない。  幸せな報告ならいつでも大歓迎だ。
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