変身猫とショートケーキの彼

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 ただいま、と声をかけて玄関に上がると母が階段下にある物置きで何かを探していた。膝をついた四つん這いの体勢のまま上半身を中に入れ、「お帰り」の声が若干くぐもって聞こえた。 「あったあった」  母が奥から探し当てたのは数年前に買ったダイエットグッズだった。どうせなら動物の言葉が分かる翻訳機が出てくればいいのに、と思った。  廊下に積み上げた本やバーベキューセットに混ざって幼い頃のアルバムが置いてあった。日焼けで色褪せた桃色の表紙が気になって、試しに手に取ってみる。 「それ、あん子が小学生の頃のだよ」 「へぇ、懐かしいね」  セロファンで蓋のされた白い台紙を頭から捲り、ふとこの男の子は誰だったかな、と記憶の糸を手繰り寄せた。母が「あれ」と声をあげる。 「こんな子いたっけ? あん子と仲良さそうだけど」  母が指で差し示したのは私が今まさに考えていた男の子だった。失礼な物言いだが、私と考えが一致していて、思い出せた解答を母に教える。 「フクちゃんだよ。年下の子でみんなそう呼んでた」 「フクちゃん……?」  母の記憶には思い当たる子がいないらしく、未だに首を捻っている。
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