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これから
「あの、清河柊吾の本ってどこにあります?」
反射的に雑誌から顔を上げた。
雨の日の大型書店。女子高生が店員に案内されていく。自然と目で追ってしまう。彼女たちは書棚の向こうに消えた。
やがて、黒い表紙の本を手にした彼女が戻ってきた。彼氏らしい高校生の元に駆け寄る。
「あったよー」
「なにこれ、ホラー? お前こんなの好きなの」
「読んでてゾクゾクするんだ」
褒められている。僕の口の端が自然と上がる。
スマホをチェックすると、思っていたより時間が過ぎていた。
そろそろ行くとするか。
何も知らない恋人たちの横を通り過ぎる時、「この人ホントに人殺したことあるんじゃないってくらい描写がすごくて」と会話の切れ端が耳を掠めた。
書店を出るとすっかり暗くなっていた。
雨は上がり、曇り空で月は隠れ、湿気を帯びた空気が辺りに漂う。
これから、人を監禁しに行く。
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