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3度目の別れ
『ごめん…絢斗…君とは終わりにしたい』
『え…順也…終わりって…別れたいって事?』
『そうだ…好きな子ができた』
『は?意味がわからない…』
『だから、謝ってるだろう?』
『謝ってるって…そんなの許さないよ…』
『お前…ウザいんだよ。良いのは顔と身体だけだな』
『……』
『じゃあな、二度と話しかけんなよ』
順也は、振り返ることもなく教室を出て行った。
『ふざけるな…顔と身体だけだと?』
俺は無意識にカッターナイフを手にしていた。それを握りしめて走り出そうと…したはずだった。
パシっ
不意に腕を引かれ、頬を叩かれた。
『あんな奴のために、バカやってんじゃねーよ』
『は?お前誰だ…なんでここに…』
『あー、悪い。盗み聞きするつもりじゃなかったんだが、無人の教室で寝てたらあんたらが…』
『悪かった…落ち着いたから、手を離せ』
『ああ』
『ちょっと、カッとなっただけだ』
『大丈夫か?顔と身体だけって、アイツ最低だな。付き合ってたんだろ?その上、好きな子ができたってふざけてるだろ』
『……』
『まあ、少なくとも次はアイツより良いのに会えるよ。さっさと忘れろよ?じゃあな、危ない事すんなよ』
彼はそう言って教室を出て行く。
さっさと忘れろ?そんなのわかってる。好きな子ができたって別れたのも3回目だ。
順也とは1年前、大学で出会い恋に落ちた。すごく好きだったんだ。好きな子ができたと言われ別れて、その子と上手くいかずヨリを戻そうと泣きついてきた。2回も許したんだ。俺には絢斗しかいないって言っただろ?
もう涙も出ない、何も感じない。誰も信用しない。
それから何度も、順也が違う子と一緒なのを見かけた。その度に順也となぜか目が合う。
でも何も感じなかった。嫉妬も憎悪さえも。
俺は壊れてしまったのだろうか。
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