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「ふ、なんだ。気がついておったのか」
そう言ってその人物は特に驚く事もなく、優雅にお茶を飲む。
「ああ。確かに、あんたはその『着物』を着ているのもあってか体のラインは見えないモノの華奢でなおかつ仕草の繊細さは一見すると女性に見えなくもない。けど、手やそもそも骨格はそうもいかないからな」
「……なるほど。しかし、仕草の繊細さを褒められるとは……今までしてきた甲斐があったというモノだ」
――今の俺の発言を「褒め」と取ったという事は、やっぱり「そういう風に教育されてきた」ってワケか。
国が違えば文化が違う。こういったところで俺はよく『違い』を知る事が多い。
目の前の『彼』の出身である『天空の国』もそういった俺には分からない文化や慣習の元で生活をしてきたのだろう。
「――こんな言い方をすれば、哀れみの一つでもされると思ったのだが……貴様はしないのだな」
「あんたがどう思ったかなんて俺が分かるはずないだろ。本人が『やってきた甲斐があった』って言っているのなら、実際そうなんだろ」
「おや、違うかも知れんぞ?」
「……はぁ、俺の知っている全てが世界の全てってワケじゃないだろ」
――俺の事を『貴様』という言い方をしているワケだし、俺の『あんた』呼びも見逃されている。
コレも文化の違いだろうか。
「ふふ、なるほど。貴様は随分我の知っている『貴族』とは違う様だな」
「褒め言葉として受け取らせてもらう」
「ああ、ぜひそうしてくれ。我の名は『ツバサ・アリサワ』と言う。一応『天空の国』と呼ばれる国では王子になるな」
「俺は『ユリウス・ローリア』だ。こっちも一応この国。チェーリス王国では第二王子になる」
俺がそう言うと、ツバサは「ほう」と興味を持った。
「それでは貴様があのおかしな前宰相を追放した第二王子か」
「……」
――こんな離れている国にまで俺の話が伝わっているのかよ。
「いや何、元々我のいる国との友好関係を結ぶ動きは以前からあったのだが、それをあの宰相がブツクサと文句を言いよってな」
「ああ、なるほど」
――そういえば、兄さんにも「ようやく話がまとまりそうだ」とか言われたっけか。
「しかし、なかなか貴様は面白いな」
「そりゃどうも。あんたも十分面白いけどな」
「それは光栄だな」
「ふん」
こうして俺は自室に戻ったはずが、離国の王子と友人関係になったのだった――。
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