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『せんせ〜、さよなら〜。』
敬子に手を繋がれてる華蓮は満面の笑みで保育園の先生の松野に挨拶をすると松野笑顔で
『はい、華蓮ちゃんさよなら〜。』
敬子は松野にお辞儀をして
『松野先生、今日もありがとうございました。』
敬子はふとクラスの隅っこに目をやると
あれ?あの男の子また隅っこで一人で居るよ………
松野 貴理子(35)
(まつの きりこ)
華蓮の通っている太海浜保育園の先生。可愛い女性。
『華蓮ちゃんのお母さん、すみませんちょっとよろしいですか?』
松野は敬子を呼び止め敬子は
『はい、なんでしょう?』
松野は華蓮を見てから敬子を見て
『連絡帳にも書いたのですが………』
敬子は連絡帳を出して開いて松野のコメントを読むと顔が引きつり苦笑いをしながら
『………って、こ、これ本当なんですか?』
松野も苦笑いで
『はい、本当です。』
連絡帳には松野の書いたコメントで
《元気な事は良い事なんですが、遊んでいる時に木登りをして一番上まで登ります。危ないからと注意を促すのですが、先生方の目を盗んでまた登ってしまいます。》
敬子は松野に申し訳無さそうに
『すみません………』
松野は笑いを堪えて
『笑ってはいけないのですが、同じクラスのガキ大将的存在の男の子と木登りの競争をしてたらしく華蓮ちゃんは一番上に登って笑顔で私達に手を振ってきて、で、その男の子は途中で怖くなって泣いてしまって。』
敬子は顔を真っ赤にして申し訳無さそうに
『誰に似たのか凄いじゃじゃ馬ですみません。もっとおしとやかにならないといけませんね。』
松野はにっこり笑って華蓮をフォローすべく敬子に
『ただ、華蓮ちゃん、クラスの女の子達が男の子達にいたずらやイジメられてると真っ先に女の子達を助けに行って男の子達を止めに入るんです。凄く友達思いなんですよ。』
敬子は心の中で
それ純君に似ちゃったのね。って、男の子ならともかく華蓮ちゃんは女の子だぞ………
松野は隅っこにいる男の子を見て
『あそこにいる男の子いるじゃないですか。』
敬子もその隅っこに居る男の子を見て
『あの男の子、いつも隅っこにいますよね。』
松野は男の子を見ながら
『あの子、藤川 翔君って言うんですが最近ずっとお弁当を持って来てないんです。で、華蓮ちゃんお弁当を分けてあげてるんです。最初、コンビニのおにぎりとペットボトルのお茶を持ってたのですが。』
敬子は隅っこに一人で居る翔を見ながら
『翔君のお母さんはどうしたんですか?』
松野は敬子に
『その事を翔君のお母さんに言ってみたのですが、お金がないんだからしょうがないでしょって言われてしまって。入園してきた時お弁当とかも持って来てたし、早めにお迎えも来てくれてたし。私がお弁当を持って来てもいいのですが、それはこの保育園の職員の決まりで他の親御さんに贔屓してると言われてしまうので禁止となってまして。華蓮ちゃんがお弁当を分けてるのを見ると心が痛みます。』
敬子は松野の言葉に
何て親なの?これが俗に言う虐待?
『先生、翔君の事で何かわかったら教えて下さい。』
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