Peacock

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「えっ!?」 私はガバッと勢いよくベッドから体を起こした。 ここ私の部屋だけど!? なんで私以外の誰かの声が聞こえるの!? 「美味しそうな負の香りがしたので  ついお邪魔させていただきました」 私の視界に飛び込んできたのは、 やたらと丁寧な口調で喋る男の人だった。 ベッドの傍らに立つ不審者。 しかしそんな不審さよりも、 彼の見た目の方に気を取られた。 綺麗な黒スーツに背中には鮮やかな翡翠色の翼。 腰から1mほど生えている矢印のような尻尾。 それはうねうねと触手のように蠢いている。 頭には山羊の角のようなものが生えていた。 それはまるで…悪魔のような見た目。 「え、誰?」 「私は虚飾(きょしょく)の悪魔でございます」 「…は?悪魔?」 「左様でございます。  と言っても私は半端者なんですがね」 アハアハと不気味に笑う男。 普通に考えてコスプレの不審者が 私の部屋に潜んでいた事実はかなりやばい。 なんの冗談だろう? ハロウィンなんてとうに終わったよ? 間違いなく通報案件なはずなのだが… 「……」 胡散臭いこの男の言っていることが なぜか全て真実に聞こえた。 彼の立ち居振る舞いからそう思わされた。 「お嬢さん、貴女のその惨めさを  私に分けてくれませんか?」 「…惨めじゃない」 「惨めですよ?嫉妬、羨み、その他諸々。  たくさんの負の感情を感じます」 「…失礼な人」 気がつけば私は普通に会話していた。 違和感なくそんな雰囲気にできる。 状況に適応させられてる感じ。 奇怪(おか)しい。 不敵に笑うその姿、 悪魔であるのは間違いないようだった。
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