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………
…
翌日、私は心地いい気分で登校する。
「お、おい…あれ誰だ?」
「あんな美人、うちの学校にいたか?」
廊下にいる人たちは男女問わず、
私のことを指さしてそう言う。
「うふふ…ふふふっ!」
思わず笑みがこぼれた。
私の笑みにまた、生徒たちがざわつく。
「美しい」「可愛い」「お近付きになりたい」
どこからともなくそんな言葉が聞こえる。
…朝起きて鏡を見て驚いた。
一重瞼の三白眼は綺麗な二重で切れ長の瞳に、
野暮ったい髪の毛は艶のある綺麗な黒髪へ。
鼻筋はまっすぐ通り、小さく艶やかな唇。
出来物一つないキメ細かな柔肌。
スラッとした細い手足、かと言って
出るところは出ている完璧なスタイル。
夢にまで憧れた、最高に可愛い私。
「…え、あれ鈴芽さん?」
「すっごい美人…整形?」
「いやでも一日であんなにはならないでしょ」
教室に入るとクラスのざわつきが耳をくすぐる。
腫れ物を見る目は羨望に満ちた目へ変わり、
女の子は妬みを、男の子は好意を向ける。
今まで感じていたものとは真逆。
そのどれもが私の自尊心を満たしていった。
「お、お前…鈴芽か?」
「あっ…孔哉!」
みな遠巻きに私を見ていた中で、
孔哉が驚いた様子で話しかけてきた。
「そうだよ、鈴芽だよ。どうしたの?」
「どうしたって…そりゃこっちのセリフだ」
ふふふっ。戸惑ってる。
「あ、孔哉。今日一緒に帰ろうよ」
「え…あ、あぁ。そりゃ構わないけど」
これでやっと孔哉の隣にいても大丈夫。
孔哉も美人の隣の方がいいもんね。
「ちっ」
「なにあれ…ありえない」
教室から女の子の舌打ちと恨み言が聞こえた。
あははっ!妬んでる、妬んでる。
そりゃそうだよね。
孔哉はクラスの子たちが
密かに狙ってるかっこいい男の子。
私なんかみーんな眼中になかったんでしょ?
あー、すっごく気分がいい!
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