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貴方は今、どこにいますか。
私はちゃんと、浄土におります。
いつか貴方と立派なお寺で見た、極楽浄土の絵よりも、もっと綺麗な花畑におりますよ。
あのお寺の絵を見て言ったこと、貴方は覚えているかしら。
「そこでなら、二人で一緒に暮らせるな」
私は嬉しくて頷きました。それと同時に、まだお互い若いのに、死んでからの事を考えるなんておかしな人だとも思ったのですよ。貴方があまりにも真剣な目をしてたから、言いませんでしたけどね。
それから半年くらい後でしたね。若い貴方が殉職したのは。
いつか、私と結婚したのは、出会った時に『この人しかいない』と思ったからだと言ってましたね。私はとても驚きました。私も全く同じでしたから。こんな事ってあるのですね。私は、その時自分の気持ちに素直になっていてよかったと心から思っていますよ。そうでなければ、貴方と一緒になんてなれませんでしたものね。
先日、神様が私におっしゃいました。
「貴女は、転生できます。また人間として、下界で生きることができるのです。ただし、記憶は失くなります。新しい人間として生きるわけですからね」
私はとても驚きました。そして神様に応えました。
「そうですか。でも、もしあの人に会えなくなるのなら、私はそれを望みません」
神様は、笑って応えました。
「安心なさい、その者も同じですよ。その者に会いたいのなら、下界へお行きなさい」
神様は優しく笑っておりました。それを見て、おっしゃった言葉に嘘はないと確信した私は、頭を下げて言いました。
「はい。ありがとうございます」
私は、今日この浄土を去ります。下界で貴方と会えることを祈って。
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