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 会議室にて、あの女はこう言った。 『武器、サポート、それぞれの箱からクジを一枚引いたら、前のドアから出て係員の誘導に従ってください。次の部屋でサポートアイテムの配布を行い、その後は皆さん正面玄関に集合です。武器はゲーム開始前の使用を防ぐため、現地到着後に配布いたします』  このルールの穴に気が付いたのはダイだけではない。  武器はゲーム開始前の使用を防ぐ――言い換えれば、使ということ。  ダイはサポートアイテムとして入手した記憶攪乱剤を、バスの中でワタルに使用した。ゲームのルールに関する記憶を忘れさせ、協力するふりをして不意打ちで襲うつもりだったわけだ。  ところが、ダイの目論見は失敗に終わる。  ワタルが引いたアイテムは全薬品抗体薬。彼はそれを手にした瞬間に自分に投与した。そのおかげで記憶攪乱剤が効かなかったのだ。  もし、ダイが記憶攪乱剤を投与しようとしなければ。ワタルだってダイのことだけは殺さないつもりだった。けれど、ダイはワタルに注射針を向けてしまった。先に裏切ったのは彼の方なのである。  ワタルは感傷を振り払うように撤収作業に取り掛かった。木の上にセットしたボウガンを回収し、トラップに使用したロープも解いて腰に巻き付ける。  あの廃倉庫でロープを発見できたのは本当に幸運だった。視界の効かない森の中、このワイヤートラップは非常に有効だ。また使う場面があるかもしれない。  ボウガンを仕掛けた木の根元には刺殺された女の死体が放置されている。この哀れな女子大生はワタルの最初の被害者だ。彼女のサポートアイテムであるライターも、一応ポケットに入れている。 「それじゃ、次の得物を捜しに行くとしますかねっと」  ワタルはうんと伸びを一つして、闇の中へと溶けていった。
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