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 廃倉庫で膝を抱え、ぼんやりと今日の記憶を遡る。  今朝、ダイと駅で待ち合わせた。そこから二人で集合場所に向かった。ダイが得体の知れない裏バイトを見つけてきたのだ。  物欲が常人の三倍くらいあるダイは、だいたいいつも金に困っている。ワタルは金に困っているわけではなかったが、ダイが持ち込む怪しいバイトのちょっとしたスリルを楽しんでいた。  では、今回の裏バイトの内容は?  トランシーバーが鳴いたのはそんな時だった。 『――俺が行くまでそのまま隠れてろよ。出歩くと危ないからな』 「ダイ、待って!」  通信が終わりそうになり、慌てて手の中の端末に縋る。多少イラついた声が答えた。 『あ?』 「僕、なんでここにいるのか全然思い出せないんだ。ここはどこなんだ? これがバイトなのか?」  切羽詰まったワタルの様子が伝わったのか、ダイの声が心なしか柔らかくなる。 『いいから、落ち着け。合流できたら全部説明してやる。とにかくそこを動くなよ?』  そして、通信を終了した。  ダイが迎えに来てくれると聞き、大きく安堵の溜息が漏れる。  彼は熟考しないと行動に移せないワタルとは対象的に、度胸があって腕っぷしが強く、常に行動が先んじるタイプ。それで手酷い目に遭うこともあったけれど、そういう時はワタルが機転を利かせて乗り越えてきた。互いの欠点を補える、親友とも悪友とも言える間柄。  ダイと合流できさえすれば、きっと大丈夫だ。  きっと上手くいく。
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