知らない私と知ってる僕

2/5
前へ
/5ページ
次へ
 私はこの春、大学進学を期に実家を出て一人暮らしを始めた。最初は渋っていた両親も、毎日連絡を入れる事を条件に許してくれた。幼少期を思えば過保護なのは仕方ない。その心配性の私の両親は、今も必死に言葉を投げかけている。  そもそも私は、この番組を見ようなんて思っていなかった。知り合いに行方不明者もいないし興味もなかったから。  それでもテレビを点けたのは、この後に放送するスペシャルドラマを見る為だ。最近推している若手俳優が出るので以前から楽しみにしていた。まだ放送時間前だったが、見逃さないように早めにスタンバイをしてテレビを点ける。そしてやっていたのが、時折組まれる失踪者捜索番組だった。  俳優のファンコミュニティで同じように待機をしている仲間とチャットをしながら開始までの時間をつぶす。  最初は聞き流していたが、「今、どこにいるの?」の声に思わず顔を上げた。夫婦の姿を目に入れた瞬間、私の意志は二つに分かれた。そして、他人が脳内に同居しているような奇妙な状態に陥った。  
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加