知らない私と知ってる僕

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 失踪者の情報が繰り返し流れる。  彼らが探しているのは、十一年前に行方不明になった息子。当時八歳で友人の家に遊びに行くと出て行ったきり帰ってこなかった。服装は半袖、短パンにサッカーボールを持っていた。  映し出される少年の姿。いくつもの写真が表示されると、心臓がまた大きく脈打つ。 (おじいちゃん家に遊びに行った時。誕生日のロウソク、僕が消す前に兄ちゃんが消して大ゲンカしたんだ。これは通っていたクラブチームの練習試合の時の写真だ!)  声変わり前の少年の弾んだ声が耳許でする。思わず耳を押さえるが、効果はなかった。不思議と少年の声に嫌悪感はわかない。  しかし、それと同時に知らなかったはずの写真を撮った時の思い出が脳を駆け巡る。何倍速にもされた様々な映像がいっぺんに詰め込まれ頭がぐらぐらした。  私は吐き気を覚え洗面所へ駆け込んだ。 「かはっ、うぇ……」  胃液がのどを焼く不快感でむせるが、何も出ない。洗面台によりかかり胸元を服がよれるくらい強く押さえる。  しばらくするとパンクしそうだった頭の痛みが落ち着いていった。いつの間にか少年の声もしない。私は足の力が抜け、床にへたり込んだ。  少し余裕が戻った私は先ほどの奇妙な体験を思い返す。脳内に響く少年の声と記憶、それを私はおそらく少年視点で追体験した。そこではあの夫婦のことを父母と呼んでいた。 「……臓器の記憶」  私の頭の中には一つの仮説が過ぎていった。
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