知らない私と知ってる僕

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 ふらふらになりながら、部屋へ戻る。点けっぱなしにしていたテレビはドラマを垂れ流していた。無音になるのも怖くてそのままにして、ベットに横たわる。  両親、医師(せんせい)……真実を知っているのは誰だろう。  信じていたものが消え去り、薄氷の上を歩くような不安に押しつぶされそうになる。  そんな時、スマホがけたたましくなった。メロディは家族からのライン通知を告げていたが、習慣で思わず出てしまう。  母からのメッセージは『今何してる?』の一言。いつもの確認なのに、このタイミングで来たことに背筋が寒くなる。  すぐに返信が出来ずに悩む。適切に誤魔化すか、何も気付かなかった振りをして番組のことを出してみようか。もしかしたら何か分かるかもしれない。  既読になっているのにいつまでも返事を書かないでいたら電話に切り替わった。  鳴り続ける着信音に、覚悟を決めた私は震える指で通話をタップする。    私は――  
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