ヒューマンside

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『大スクープ!  この春、ついにナマケモノが走り出した!!!』  昨今は、テレビもネットも新聞も、この話題で持ち切りだ。  事の発端は半年前。  アルゼンチンにて、二本足で直立する二匹のナマケモノが目撃された。 「立ってる……?」 「ナマケモノが立ってる!」 「ちょっ、カメラは? 写真、写真!」  第一発見者はアジア人の観光客である。  彼らがこの絶好のシャッターチャンスを逃すはずもなく……嬉々としてナマケモノの直立姿をカメラに収め、すぐさまSNSに投稿した。  その写真は、ナマケモノが夕日をバックにたたずんでおり、図らずもハリウッド映画のワンシーンのような壮大さを醸し出していた。 「このナマケモノ、強い(確信)」 「イケメンすぎるw」  あれは、人々の興味を引くには十分すぎるインパクトであった。  そんなこんなで、直立する野生のナマケモノはSNSで話題となり、瞬く間に世界へ広まった。  さあ、ナマケモノブームの始まりだ。  若者の間でナマケモノメイクやナマケモノファッションが流行りだしたかと思えば、さまざまな業界がナマケモノブームにあやかった商品を売るようになった。  ナマケモノパンケーキやナマケモノシューズ、中にはナマケモノ香水などという迷走感満載の商品もあったが、蓋を開けてみれば、ほとんどが商品名にナマケモノを付けているだけだ。  いったい何の意味があるのか、と言いたいところだが、需要があるのだから仕方がない。 『今年の人気動物ランキングは、イヌ・ネコ・ウサギを抑えて、ナマケモノが一位です!』 「フゥ〜!」  人類はナマケモノに熱狂していた。  ニューヨークのタイムズスクエアで行われた年末のカウントダウンイベントにて、ナマケモノ画像一色が貫かれたほどだ。  なんともバカバカしい話である。
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