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「なあ、呪いって、何なの?」
ガトラーが口を開いたのは最初の花火が打ち上げられ、夜空に舞った火花が星と見分けのつかないくらいに散り別れた時だった。次の花火はもう、空で一本の軌道を描いている。
「その前に君の、魔力であって、魔力でない、その力について教えて欲しいんだけどな。」
気になってしょうがないんだと、隣に座る勇者はガトラーの手を取る。
結局、花火を見るのに人混みを避けていたら都の中心部から離れて農道を通り、小高い丘の上まで来てしまった。思いがけず、城がよく見えると勇者は満足そうだったが、花火は遠い。だがこんなところにも意外と人は多く、周囲は見物客で賑わっている。
ここから見えるお城の窓は王女様のお部屋らしいぞと後ろから、真偽のわからない噂話が聞こえる。
「君からは魔力がなにも感じられない。でもそれに似たものは持っているんだね?それは、何?」
実は教えられないんですと、言わなくてはいけないのに。そう言ったらなにもかもを逃してしまいそう…いや、殺されるだろう。指一本であの衝撃なのだ。三本もあれば十分だ。
「あんた、手、すごく熱いよ。大丈夫?」
ガトラーの手を握る勇者の手はひどく熱くて、燃えてしまうのではないかと心配になるほどだった。
熱くもなるさ、だって君がすごく気になるからと深く息を吸い、吐く。
ガトラーは栗色の髪に触れたくなり、少し長い髪を左耳にかけて碧色の耳飾りを眺める。
「俺の力は、魔力ではない。魔王の力だ。だから魔力として感知はできない。」
そう、とあんなに知りたがっていた勇者は意外にそっけなく、花火に目を向ける。
「魔王の力は、魔力とは別物。ということかな。」
花火が上がったのと、王女様のお部屋と言われた窓が全て割れ、大きな爆音が上がったのはほぼ同時だったろうか。
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