グレンはなんでも知っている

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 木箱から紙の束を一塊出しては、ペラペラと簡単にそれを繰り、ここで分かれるとカクレに判断されたものは薄い紙を貼り付けられてまた紙は動いて行く。  木箱の上にあった束は床に広げられ、それにはもう所々に薄い紙が挟まれている。  手伝おうか?と聞いて、結局は混乱するから必要ないと断られて、やる事のないガトラーは横でその動きをずっと見ている。ずっと。 「もう、やめたら?」  先に口を開いたのはカクレだった。 「なにを?」 「見るのをだよ。まだやりたいから、ガトラーは飯でも食べて、好きなことしな。」  なら、とまたカクレを見ている。 「好きなことをする。」  膝を抱えて座り、紙の束に書かれた文字を横目で追う。なんだこれも、面白いな、とその紙の束から挟まれた紙が落ちないようにそっと一束を手に持つ。 「お月様を追いかけて外に出て、迷子になる。」  紙に書かれているのは、魔力についての考察だった。いつから、誰が持っていて、それを使おうと考えていったのか…という内容なのだが、その隅に落書きのように一言、二言書き記してある。 「グレンの落書きは面白い。たまに絵も書いてあるんだよ。」 「うん…面白いけど、生々しいのがたまにあるから、ついそっちばかり読んじゃって…きりがない。」 「なに?生々しいのって?」  カクレはある一束を床から見つけ出すとガトラーに渡す。それは魔王の力を、思い切りだけで継承してしまった後に書いたものか。魔王の特殊な魔力について記した本筋から離れた隅にドロウへの想いがつらつらと書かれている。 「読んだら悪いような内容だ。」  少し紙に目を留めて、すぐにそれを上げ、紙の束を見えないようにバサリと裏に返す。 「だけど、書いてあるまともなことは読みたいだろう?もれなく、くっ付いてくるんだ。嫌でも目に入る。」  カクレはそれを受け取り、元あった所にまた戻す。 「封具について書いてあるのは、まだ落ち着いてたけど…。」  「ガトラーが来たからだろう。それか、魔王の力をもらって幸せそうだったなんて、ドロウに言わせるほど、グレンの芝居は上手かったか。」  どちらにしろ、もうわからない。グレンは…と言いかけて、カクレは口を開くのをやめた。  
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