グレンはなんでも知っている

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「護衛に付いてくれるトムさんですね!…と、もう一人?まあいいや。よろしくお願いします。」  翌日、北の国まで向かう一行の護衛に付き添うため指定された店に赴いた二人はまた、顔を見合わせた。  こちらの食べ物なのか、丸くてやわらかいもちもちした、串に刺さった菓子を食べる三人組の一人がこちらに手を振っている。 「うまいですね、ご隠居の料理もうまいけど、こういうもんもたまにはいいですね。」  昨夜、ソウは店を閉めたと言っていた旅姿の男がその菓子の三本目を口に入れた。 「ハッチ、ご隠居はやめろ。まだ若いんだから。ソウさんと呼べ。たまには?いつもいつも食べてるだろう。食いしん坊が。」  やかましいハッチをソウが穏やかに戒めるその横で、静かに茶をすするのは歳若い少年。 「静かにしろ…して、お前…おじさん、たち。茶がまずくなる…美味しくなくなる、な。」  世間離れしているのがバレバレだし、たまに魔力が見え隠れしている。 「ソウ、どうしてここにいる?」  トムが席に着いて小さな声で聞く。 「あー、えへん。ソウ様とは呼ばずとも、せめてソウさんとお呼びください。」  食いしん坊のハッチと呼ばれた男が威張り出す。なにかがおかしいと、ドロウが周りを見ると、実は客がこの三人組と自分達しかいないとわかる。 「普通に話をしていい。人払いをしてあるから。」  質素だが、紫色のマントを羽織ったソウがずず…と茶をすする。 「こちらは、先の副将軍ソウ・ミクニ様でございます。口は慎むように!」  ソウがタンと茶を置く。 「トム、あー…君、気にしなくていい。ソウと呼んでくれ。訳あって隠居して町で料理屋をしていたが。今回第二王子を無事、北の国までお連れする任を賜わった。」  二人の目を見ながら、これも穏やかにこの一行の説明を始める。 「北の国は君たちの国だそうだね、適任だ。そちらまで行けばあとは後発の副将軍が王子を引き取ってくれる。そこまで、頼みますよ。」  隠居、第二王子とトムとドロウは揃ってソウと少年を交互に見た。 「王子からも一言、この二人に激励をお願いします。庶民の感じで。」  王子が立ち上がり、違うなと座り、トムとドロウを見る。 「よろしく…よろしくな!名前は?」  トムです。ドロウです。と二人が名乗る。それを聞きながら王子の身体からは、ふわりふわりと魔力が漂う。 「トム、ドロウ。二人は仲間か。魔力が強いと聞く。よく働けよ。」 「王子!それ!」  王子がチッと舌打ちをして頭を抱える。 「僕とドロウは伴侶です。僕だけのつもりでしたが、同行を許して頂けますか?」  トムがはっきりと「伴侶」と言うのを聞き、ドロウは喜び、ソウはチッと舌打ちをして、穏やかだか棘のある言い方でドロウを値踏みするようにじろりと見る。 「いいですけど。トムの伴侶となったか、ドロウ。やはり返すのではなかったな。」  王子からはまた、魔力が出ているようだったが。それはさっきよりも重たいように感じたのは、トムだけだったろうか。
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