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「王女の窓」と呼ばれていた場所は、その部屋が一つの続きだったのか、何部屋にか分かれていたのかわからない程に破壊されていた。
高い天井に、装飾品であったろう物体の多様さを見ればこの部屋が贅を尽くして飾られていたのだろうと想像できる。
「うわ、すごいな。でも、僕よりは下だな。三発でこれくらいじゃ。僕なら一発なのに。」
「三発?」
「続けて三回、魔力が動いた。わかんなかった?」
ガトラーには大きな一つの塊が動いたようにしか思えなかったけれど、それが連続の三発であるのかと思えなくもない、言っても馬鹿にされるだけかと、口は開かなかった。
「王女様?ご無事ですか?いたら返事、してくださーい。」
「無理ですよこれじゃ。骨も残らない。」
まだ黒煙の燻る中を、パキリ、バキバキとなにかの残骸を踏みながら王女を探す。今、踏んだのが王女かもしれないと思うと、良い気持ちはしない。やっと成人したのに、王は残念だろうにと思う。ガトラーも魔王の弟子、可哀想とか不憫だとかの感情はどこかに置いてきたまま育ってしまった。
慈愛に満ち溢れた勇者であれば涙でも流すか?と横を見れば、王女様ー!王女様ー?と焼け焦げた扉を足で蹴りながら王女を探し回る姿があった。
扉は簡単に崩れ落ちた。その先にはこちら側とは比べ物にならない程、いや、無傷の部屋が現れた。
「さっきから、うるっさいわね。何?あんたたち。どっから入ってきたのよ。」
そこでは王女が涼しい顔で本を読んでいた。
この部屋の窓だけは割れず、フリルの付いた美しいカーテンが夜風になびいている。窓は開いてすらいたのに。
この部屋だけは無傷なのだった。
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