最強の二人

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 指一本でトントンと彫刻の施された重厚な机を叩くと、部屋は瞬きをする間に元のままに戻った。    元のままをガトラーは知らなかったけれど、高い天井に多様な装飾品は想像を遥かに超えて豪勢なだったから恐らくこれでいいのだろうなと、広い部屋を見渡した。この部屋もこの都と同じように整然としている。装飾品は置かれているのに、それに規則性があるというか、必要な分を必要なだけ置きました、興味はないんだけどねと言っているように感じてしまう。やっぱり、居心地が悪い。むしろこの王女様の方が見ていて気持ちが良くなってきた。 「素晴らしいなぁ。あなたはその髪の毛、一本一本が魔法の源なのですね。」  勇者がそう言う横で、また、涼しい顔をした王女の額から、一本の髪の毛がチリ…と燃えて焼け落ちていったのをガトラーは見た。 「まさに、最強の魔法使い。エリ・ナドラス王女。一緒に旅に出ましょう。この魔王の弟子が道案内してくれます。」  魔王の弟子なの?とガトラーを見るその目には先程までは枯れ果てて、もう湧くことはないかと思われた生気が泉のように湧き出て、美しく輝くようだった。行きましょう、行きましょうと王女は立ち上がる。  この格好ではだめね、とお目見え用に着ていた豪勢なフリルの付いたドレスを汚いものにでも触れるかのように摘み、着替えるから少し時間を頂戴ねと、どこかへ踊るように駆けて行った。衣装部屋でもあるのだろう、この広いどこかに。 
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