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宿屋に着いたのは、日付が変わった時刻だったろうか。どこもかしこもまだ騒がしく、帰宿が遅れた宿泊者ばかりでまだ店主はその対応を続けていた。
「大変でしたね。まだ湯はやってますから、使ってください。おや、そのお坊ちゃんは?」
ガトラーの背中で眠る王女が変身した男児を、店主は先程まではどちらも連れていなかったのを覚えていた。
「姉が丘の方に住んでるんだけどね。訪ねたら甥が宿屋に一緒に泊まりたいと言うから連れて来たんだ。まさか、こんなことになるとは。すっかり寝ちゃったよ。僕と一緒の部屋に寝かせてもいいかな?」
勇者は嘘も上手いのかと、笑うのを誤魔化すためにガトラーはよいしょと、背中の王女を押し上げる。
どうぞどうぞと主人は階上を指す。
「途中で寝るなんて。頭まで少年になっちゃったのかね?」
「安心したんじゃないの。」
王女を部屋に寝かせると、外から鍵をかける。大丈夫?こんなところでとガトラーが目で伝えると、大丈夫だよ。自分の身は自分で守れるさと勇者は自分の荷物を肩にかけて、さっさと廊下を歩いて行ってしまう。
最強魔法使いをさらおうなんて、命知らずはいないかと、ガトラーも勇者の後ろを追う。
「まだ湯が開いてるらしいから、行ってきたらいいよ。僕はちょっと、身に着けている封具が多いから行けないけど。」
ガトラーは先程見た、首飾りを思い出す。あと、いくつつけてるの?と勇者の耳飾りを見る。
「見せてあげようか?」
勇者はガトラーが鍵を開けた部屋に入る。
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