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ガトラーが頬杖を解いて勇者の身体に触れようとすると、それより先に伸びてきた右手がその手を掴み、寝台に押し倒される。
横向きに顔を合わせては、まだ月の目は見えない。そうじゃないのにとガトラーはもどかしくて、右肩に触れて押し、上へ行こうとする。さっき掴まれた手も、肩もやはりひどく熱い。
上から勇者を見下ろして、やっと瞳に光が入りその目が見える。月の光が差し込んだ半月の黄色は昼間の光の中で見るよりもさらに輝いて綺麗だった。
「ガトラー、お願い。必ず、魔王城へ連れて行って。僕は幸いの使者に会いたいんだ。早く。なるべく早く。」
その瞳を大きく開いて潤ませ、勇者は懇願するようにガトラーに頼む。
「約束してくれたら、今夜、僕を好きにしてくれていい。どうしてくれたっていいから。」
勇者はガトラーの服に手を這わせ、上から下になぞるように動かす。
幸いの使者に出会ったら、この勇者はどこかへ行ってしまうだろうか。でもいい、俺は魔王の弟子。考えたくはないが、魔王無き後は最後の力を継承してこの自分が魔王になるのだ「魔王無き世」なんて訪れない。嘘?そんなの構わないだろう。まともであることなんか、幼い頃にどこかに置いて来てしまったんだ。魔王城に行った時から。
その時ガトラーは、頭の中にある鍵のついた引き出しについに合う鍵が見つかるのではと、少しそちらに意識を持って行った。
でもだめかとすぐに諦め、勇者の耳元に唇を寄せた。
「約束する。必ず、連れて行ってあげるから。安心して。」
そのまま耳たぶを唇で摘まみ、いい?とほとんど息の声で聞く。
「どうしてくれたって、いいから…。」
勇者はガトラーの腰に細い足を絡ませた。
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